内省クラスで、相談者さんと一緒に見つけてきたことをもとに書いています。例や工夫は、分かりやすくするために添えています。
この記事について
こんにちは、田尻愛です😌
「自分を犠牲にしない生き方」を伝える、
メンケアの学校を主宰しています。
内省の専門家として、
これまで累計3000件以上の内省クラスに立ち会ってきました。
この記事は、ひとりの相談者さんの約1年の記録です。
その道のりを、時系列でたどっていきます。
「自分を許せない」と、
「ダメな自分を受け入れられない」。
言い方は違っても、同じひとつの悩みなんです。
頭では分かっていても、いざ許そうとすると難しいんですよね‥
この記事でご紹介する相談者さんも、
「なんで私こんなダメなんだろう」と、昔はずっと悩んでいた方です。
でもそれは、心が弱いからでも、
努力が足りないからでもないんです。
自分を刺す「小さいナイフ」を、
知らないうちに握っているだけ。
だから、「受け入れよう」と頑張るだけでは、
苦しさが増えてしまうんです。
この方は、その手をどうやって止めていったのでしょう?
ここから、一緒に見ていきますね。
目次
- 「ダメな自分を受け入れる」とは|好きになることではなく、刺す手を止めること
- 昔はずっと悩んでいた頃|「なんで私こんなダメなんだろうな」
- 転機|なぜ自分へのダメ出しは止まらないのか
- 変化のあと|「自分を責めることが、なくなっていた」
- ダメな自分を受け入れるには、どうすればいい?|今日からできる3つの練習
- 「ダメな自分を受け入れる」について、よくある質問
- おわりに|ナイフを握る手は、自分で止められる
1. 「ダメな自分を受け入れる」とは|好きになることではなく、刺す手を止めること
ダメな自分を受け入れるとは、
「これじゃダメだ」と、自分を裁き続ける手を止めること。
そして、できないところも含めた自分を、
「これも私だ」と認められている状態のことです。
ここで大事なのは、
「ダメな自分を好きになること」ではない、ということ。
無理に「こんな自分が大好き!」と、
思い込まなくていいんです。
わたしは内省クラスで、受け入れられた状態を、
こんな言葉でお伝えすることがあります。
「私、こんなにどんくさいところがあるけれど、
人のことをすごく大事にするし、周りの方も支えてくださる。
こういうところも含めて、私らしいよね」
そんなふうに、自分に肯定を出せている状態なんです。
どんくさいところが、消えるわけでも、
好きになるわけでもない。
「ある」と認めたうえで、それも含めた全体に、OKを出せる。
これが、この記事で目指すところです。
そして、もうひとつ。
この状態は、気合いや性格改造では、
なかなかたどり着けません。
「小さいナイフ」の仕組みに気づいて、ものの見方を少しずつ変えていく。
その先に、たどり着くものなんです。
ここからが、ある相談者さんの約1年の記録です。
まずは、道のりの全体像からです。
この道のりは、すべて同じひとりの相談者さんの記録です。
途中で、別の相談者さんの声も少しだけ出てきます。
そのときは「別の相談者さん」と書いて、区別しますね。
2. 昔はずっと悩んでいた頃|「なんで私こんなダメなんだろうな」
この相談者さんは、
毎日を一生懸命に頑張ってこられた方です。
はじめの頃の内省クラスで、
昔の悩みを、こう話してくださいました。
頑張っていたんです。
それなのに、頑張った中身より先に、
「抜けたところ」だけを拾って、ダメを出す。
これを、ずっと繰り返してきたんです。
ご本人いわく、「劣等感の塊なんです」。
この頃のダメ出しの声には、2つの特徴がありました。
頑張った日にも鳴る
努力の量は見ずに、「抜けたところ」だけを拾って責める
昔から鳴り続けている
気づけば、ダメ出しが当たり前になっている
これは、この方だけの話ではありません
ここで少しだけ、
別の相談者さんの声も、聞いていただきたいんです。
ダメ出しが当たり前になっているのは、
この方だけではないからです。
別の相談者さんが、以前お会いしたときに、
口にしていた枕言葉があります。
「私なんて、いや私、全然ダメダメなんです」
謙虚さのようでいて、
自分で自分の価値を、下げてしまう言葉なんです。
言い方は違っても、
自分で自分にダメを出しているところは、同じなんです。
では、なぜダメ出しは止まらないのでしょう?
ここからが、この方の記録の転機です。
3. 転機|なぜ自分へのダメ出しは止まらないのか
内省クラスを重ねる中で、
この方のダメ出しの根っこが、見えてきました。
親から受け取った言葉について、
ある日、わたしはこうお伝えしました。
「受け取った言葉を、何回も思い出しながら、
小さいナイフを持って、自分を傷つけている感じなんです」
この手を止めたい。
それが、この方とわたしの、共通の目標になった日でした。
なぜ、ダメ出しは止まらなかったのでしょう?
理由は、意外なところにありました。
理由1:自分のものではない荷物を、背負っていたから
この方は、親が抱えていた課題を、
自分の課題として、代わりに背負っていました。
親自身の未熟さや、親がかけてきたきつい言葉。
それをどうにか解消しようと、奔走していたんです。
わたしは、こうお話ししました。
「背負っているものは、あなたのものじゃないんです。
だから、解消しようと思っても解消が進まない。
そこでエラーが起こるんですよ。
何かおかしい、って」
自分のものではない荷物は、
どれだけ頑張っても下ろせません。
下ろせないから、「まだ足りない、これじゃダメだ」と、またナイフを握る。
ダメ出しが止まらない仕組みは、ここにあったんです。
別の日には、こうもお伝えしました。
「親が持っていた課題と、
あなたが持っている課題は、別の問題なんです」
この課題の切り分けが、
この方の転機になっていきました。
相手の課題まで「私がどうにかしなきゃ」と背負う → 解消できない → 「私がダメだからだ」とまた自分を責める
「これは相手の課題、これは私の課題」と分ける → 背負わなくていい荷物を手放せる → ダメ出しの理由が減っていく
相手が親でなくても、仕組みは同じです。
理由2:事実に、昔の解釈を上乗せしていたから
もうひとつの理由は、記憶の中にありました。
子どもの頃、動きがゆっくりで、家族にきつく言われたときのこと。
この方は、大人になった今、こう振り返っていました。
子どもの頃に受け取った、「仲間外れにされた」という見方。
それを大人になった今も、
目の前の出来事にかぶせてしまうんです。
事実はひとつなのに、
昔の解釈が上乗せされて、大きくなっていく。
わたしはこの状態を、こうお伝えしました。
「解釈が大きくなっていって、
自分で自分の首を絞めている感じ」
・準備したのに忘れ物をした
・子どもの頃、動きがゆっくりで、きつく言われた
・「なんで私こんなダメなんだ」
・「私が悪い、仲間外れにされた」
あなたを苦しめているのは、
事実よりも、上乗せされた解釈のほうなんです。

だからこそ、
その手は、自分で止められるんです。
💡 ここがいちばん大事なポイント
ナイフを握らせているのは、
「自分のものではない荷物」と「昔の解釈」です。
そして、分かったものは調整できます。
仕組みが見えたところから、手を止める練習は始められます。
4. 変化のあと|「自分を責めることが、なくなっていた」
課題の切り分けと、事実と解釈の切り分け。
この方は、この2つを内省クラスの中で重ねていきました。
転機から、半年ほどたったある日。
身近な人との毎日について伺うと、こんな言葉が出てきました。
これまでは、身近な人が不機嫌になると、
「私が悪い」と思っていたそうです。
そこで知ったのが、
「相手の問題を、自分の問題にしなくていい」という見方でした。
そのことを、こう話してくださいました。
相手の問題は、相手のもの。
課題の切り分けと呼ばれる見方です。
その見方を知って、身近な人の機嫌で、
自分を責めなくなってきたんです。
ただ、不機嫌に身構えてしまう癖は、
まだ残っている、とも話してくださいました。
変化は、少しずつなんです。
・「劣等感の塊なんです」
・抜けたところだけを拾って、ダメを出す
・全部「私が悪い」で引き受ける
・「自分を責めることが、なくなっていた」
・相手の問題を、自分の問題にしなくていいと知った
・身近な人の機嫌で、自分を責めなくなってきた
1年近くたった、いま|受け入れるとは、一回きりの出来事ではない
この方のダメ出しが、
ゼロになったわけではありません。
1年近くたった今も、
別のテーマで、ダメ出しが出てくることはあります。
そして、自分を刺す小さいナイフには、
自分で選んでいる部分もあります。
そう聞くと、責められているようで、
痛いかもしれません。
きつい言葉を向けられたこと自体は、
あなたが選んだわけではありません。
選んでいるのは、そのナイフを持ち続けることのほうです。
自分で選んでいるものは、自分で選び直せる。
認知が変わったとき、
このナイフの手を止めることができるんです。
この方は今も、テーマが変わるたびに、
「気づいて、手を止める」練習を重ねています。
ダメな自分を受け入れるとは、
この練習が、当たり前になっていくことなんです😌

5. ダメな自分を受け入れるには、どうすればいい?|今日からできる3つの練習
ここまでの記録から、
今日から使える練習を、3つ取り出してみますね。
どれも、この方の内省クラスで、実際に出てきた見方です。
それぞれの🔑コツは、試しやすいように添えた一例です。
練習1:「いま、ナイフを握ってたな」に気づく
最初の一歩は、気づくことです。
直すのは、その後でかまいません。
ダメ出しの声は、当たり前になりすぎていて、
鳴っていることにすら、気づきにくいんです。
「あ、いまダメ出ししてたな‥」
そう気づけたら、それだけで一歩目です。
この方の記録でも、
まずは仕組みに気づくところから始まりました。
自分の考え方の癖を、いい悪いの判定ぬきで、
少し離れたところから眺めてみてくださいね。
🔑 ダメ出しの声に気づくコツ
例えば、自分を責める言葉が浮かんだら、
その後ろに「と、いま私は思った」と付け足してみる。
「私はダメだ」▶︎「私はダメだ、と、いま私は思った」
声と自分のあいだに、少し距離を置く練習です。
練習2:事実と、上乗せした解釈を切り分ける
事実と解釈を切り分けることは、
この方の内省クラスでも、何度か出てきた練習です。
例えば、
紙に「事実」と「頭に浮かんだ言葉」を、
分けて書いてみるのもひとつです。
「忘れ物をした」は、事実。
「なんで私こんなダメなんだ」は、頭に浮かんだ言葉。
分けて並べてみると、どちらが自分を苦しめていたのか、
目で見て確かめやすくなります。
🔑 解釈を見抜くコツ
頭に浮かんだ言葉のほうには、
こんな質問をひとつ、してみてもいいんです。
「これは、いつから使っている言い方だろう?」
「私が悪い」「仲間外れにされた」。
子どもの頃からの言い方なら、昔の解釈がかぶさっているのかもしれません。
練習3:「この荷物は誰の課題?」と問いかける
ダメ出しの声の中には、
自分のものではない荷物が、混ざっていることがあります。
誰かの機嫌。
誰かの未熟さ。
誰かがかけてきた言葉。
責める声が鳴ったら、
こう問いかけてみてくださいね。
「いま背負っているこれは、私の課題?
それとも、相手の課題?」
そして、相手のぶんは、相手に返していく。
この問いは、家族との間でも、
仕事や人との関係でも使えます。
この方が「自分を責めることが、なくなっていた」と話せたのも、
この見方を知ったことが、大きなキッカケでした。
🔑 課題を切り分けるコツ
迷ったときは、こう考えてみてもいいんです。
「それを最終的に引き受けて生きていくのは、誰?」
相手の機嫌や、相手の言葉選び。
それを引き受けて生きていくのは、相手のほうです。
6. 「ダメな自分を受け入れる」について、よくある質問
Q1. ダメな自分を受け入れるのは、開き直りや甘えとは違うんですか?
違います。
開き直りは、
「どうせ私はこうだから」と、考えるのをやめること。
受け入れは、「どんくさいところも含めて私らしいよね」と、
現在地を正確に認めることです。
この記事の方も、事実と解釈、自分と相手の課題を切り分けながら、
自分を責めることを、少しずつ減らしていきました。
現在地が正確に分かるからこそ、
人はそこから動けるようになるんです。
Q2. 受け入れようとすると、「受け入れられない自分」にまたダメ出ししてしまいます。
それは、練習の失敗ではないんです。
ナイフの向きが、「受け入れられない自分」に変わっただけです。
「いま、またダメ出ししてたな」と気づけたら、
それは、練習がひとつ進んだということ。
気づけた回数を、
そのまま数えてあげてくださいね😌
Q3. ダメな自分を受け入れられるまで、どのくらいかかりますか?
この記事の方は、転機まで数ヶ月。
そこから半年ほどで、「自分を責めることが、なくなっていた」という言葉が出てきました。
そして1年近くたった今も、
テーマが変わるたびに、練習を続けています。
受け入れは、少しずつ当たり前になっていくものです。
なので、かかる期間には個人差があります。
早さよりも、
「気づけた」を積み重ねることを、大事にしてみてくださいね。
Q4. 自分を責める気持ちが強すぎて、つらいときは?
自分へのダメ出しがあまりに強く、眠れない・日常が回らないほどのときは、内省よりも先に、専門の相談窓口や医療機関を頼ってください。この記事の末尾に、24時間つながる窓口の一覧を載せています。ひとりで抱え込まないことが、自分を大事にする最初の一歩です。
7. おわりに|ナイフを握る手は、自分で止められる
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
「自分を許せない」と検索して、
この記事にたどり着いたあなた。
長いあいだ、「これじゃダメだ」と自分を責め続けて、
その手を止めたいと、願ってきたのだと思います。
この記録の方は、
特別に強い人だったから、変われたわけではありません。
「劣等感の塊なんです」と話していた方が、
自分の握っていたナイフに気づいていく。
そして、背負わなくていい荷物を、少しずつ下ろしていく。
やがて、「自分を責めることが、なくなっていた」と、
自分の口で話してくださるようになりました。
ものの見方は、今日から練習できます。
「自分を許したい」と願えた時点で、
あなたはもう、ナイフの存在に気づき始めています。
今日、責める言葉が浮かんだら、
「と、いま私は思った」と、ひとつ付け足してみる。
そこから、始めてみてくださいね。
ナイフを握るその手は、自分で止められます。
少しずつで、大丈夫ですよ😌
🛡️ こころが苦しいときの相談窓口
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